蜘蛛の糸

活動を停止した筋肉少女帯の名曲「蜘蛛の糸」を聞くと、
ボーカル・作詞の大槻ケンヂ氏は現代の社会不安を
良く理解してるなあと感心する。
1月5日、米フロリダ州タンパ市でセスナ機を操縦し、
高層ビルに激突死した15歳の少年が、私には、この歌の中に出てくる
「友だちはいないから、ノートに痩せた子猫の絵を描く少年」
とダブって見えて仕方がない。
今日発売の講談社フライデー74ページの記事によると、
少年は生前、「(テロ事件の)犯人が、どれほど深く絶望していたかが
僕にはわかる」と語っていたという。
少年はシリア人の血を受け継いでいるということだが、
名前もクリスチャンネームだし、モスレムだったという話は
出てきていないと思う。
にもかかわらず、「ビン・ラーディン氏への同情が動機」
フロリダ州警察当局)で事件を起こしたのは、
単に、炎上する世界貿易センタービルを見て喝采した
世界中のモスレム市民の思いに共鳴しただけとは思えない。

恐らく彼は、紛争地で日常に極限を抱える子どもたちと、
先進国のビルの谷間で日常の闇に極限を見てしまう子どもたちの
間を繋ぐミッシング・リングだ。

「いつの日か蜘蛛の糸を登って、火をつけて、燃やし尽くしてやる」
という歌の中の少年、
元ギャングだったが、信仰に目覚め、
ブラックモスレム団(Nation of Islam)の革命家となり、
アフリカ系アメリカ人の解放に命を捧げたマルコムX、
チェチェン人とともに闘う日本人イスラム聖戦士ハワジ、
炎上する世界貿易センタービルを見て喝采したイスラム世界の市民、
今もオウム真理教アレフと改称)の幹部を務めている友人、
引き籠もり、不登校、鬱、アダルトチルドレン、エトセトラ・・・・
そして、私自身・・・・・・
社会的にネガティヴに現れるか、ポジティヴに現れるかの差こそあれ、
それぞれ、セスナ機の形をした蜘蛛の糸を伝って、
どこかへ上りつめようとした少年と、少しずつ重なり合う部分がある。