トビリシへ

ひげもじゃ、髪の毛伸び放題の日本人バックパッカー
「きみの部屋に泊めてくれないの〜?」と猫なで声を出しながら、
エリフの肩に馴れ馴れしく手を触れた。
エリフは英語で「触るな!」と言った。
この男をジハード(天誅)の名の下に殺そうかとしばし迷う。
こういう場面は大抵の日本人正義漢も私と同じように感じるであろう。
それでもやはり、こういう場所での日本人の姿を見るたびに、
自分が日本人と宗教的に縁を切ったことを良かったと思う。
このようなくだらない民族と同類だと自分を思わなくていいから。
もっとも、中東を旅行した女友達が痴漢に悩まされたという話を聞くときに
私は他人顔をするわけにゆかないのだが。
世界で痴漢が多いのは中東と日本だそうだ。
イスラム教徒と日本人は全員変態である。
どちらにも所属する私って・・・・

夕べ、エリフは再び自宅の夕食に私を招いてくれた。
美味しいピデをご馳走になった。
食事の後、何時間も彼女と話し込んだ。
エリフは日本人旅行者が本当は嫌いなのだと思う。
しかし、私に対してそうはいわない。
今まで二度、無礼な日本人旅行者に
不愉快な思いをさせられたことがあると話していた。

日本人がいかにイスラムに対して無知で、
イスラムを理解しようという意志すらないということを
エリフは十分わかっている。

朝からバス会社を訪ねて、今夜のトビリシ行きのチケットを買ってきた。
去年利用したバス会社は潰れていて、その側の別の会社も潰れていた。
今年2月のトルコ通貨危機のあおりだろうか。
バスの旅は40時間掛かる。
宿に戻って、エリフに「チェックアウトするよ」といったら、
彼女は「うそ!」といって笑った。