ギャルギャル極右集団

パーム・ホステルのマネージャー・ポールが、「今夜は平和集会だ」という。
ユダヤの市民が人間の鎖エルサレム旧市街を包み込むのだそうだ。
おかしな話だ。
NGOパレスチナ平和フォーラムの役重さんが、
インターネットから正確な情報を見つけて来てくれた。
やはり、集会をやるのはユダヤの極右団体だそうだった。

夕方、果たしてイスラエル治安部隊が、旧市街の周りに集結し始めた。
パレスチナ人の住む東エルサレム西エルサレムの境界付近、
その東エルサレム側に、鉄柵のバリケードを立ててゆく。
パレスチナ人は西エルサレムに立ち入れない。

バリケードの向こうから、レイブの音楽が聞こえてくる。
パレスチナ人の若者が集まってきた。
騎馬警官隊に野次をとばす。
警官隊は馬をけしかけて、群集を追いたて、
食い下がってきた何人かと睨み合っている。
ついに、パレスチナ人の誰かが石を投げた。
その瞬間、数十人の警官隊が手に手に棍棒を持って、
一斉に群集に殴り掛かった。

私はパスポートを見せて、バリケードを潜り、西エルサレムへ歩いていった。
近づくにつれ、人の密度が増し、
ついにだだっ広い広場が満員電車のようになった。
役重さんに「極右団体の集会」と聞いていたが、
どうも間違いらしい。
明るい音楽、若い女性と子供ばかりが目に付く。
ポールがいった通り、平和集会だろう。
いや、間違いではなかった。
パレスチナの国旗に髑髏を重ねたプラカードが、
その女性たちの頭上に翻っていた。
いったい何万人いるのか、遥かな建物の陰まで、
ずっと人の頭が寿司詰めになっている。
それが、目も眩まんばかりのセクシー・ギャルばかりで、
どれもこれもおへそを出して踊り狂っている。
カメラを向けると、黄色い歓声が沸いた。
ユダヤギャルがこれほど可愛いとは知らなかった。
ギャルギャルにもみくちゃにされながら、
私は薄れ行く意識の恍惚の中、
あんなパレスチナのむさ苦しい連中に付き合うより、
こっちにずっといたいなあ、と考えていた。
私が極右がいやなのは、頑固で、分からず屋で、危なそうだからだ。
こんなに可愛いということは、極右といったって
そんなに危なくないかもしれないし。
ひょっとすると、イスラエルパレスチナより
正しいのではないだろうか。

私は魂を売り飛ばす5秒前だった。