ソドム・モスクワ

クズネツキー・モストのシャウルマの店へ行った。
ここは既に馴染みのはずだが、今日は雰囲気が違う。
誰かが大きな声を出している。
テーブルと壁の間の狭い通路に、
見知らぬ女が私に背を向けてしゃがみ込んでいる。

目を疑った。
女が下半身をはだけていたからだ。
見ぬ振りをして、脇を通り過ぎ、
カウンターでシャウルマとチャイを注文した。
背後からさっきの女が、私の肩を押して割り込んだ。
既にスカートを履いていた。
なぜかプラスティックのカップを持っている。

私はシャウルマを受け取って席に就くと、
カウンターの女を忘れ、食べ始めた。
今日のはケチャップが多すぎる。

次にカウンターを振り返った時、
女の姿はなかった。
カウンターの女性店員が水浸しのティーバッグの
空箱を持って、放心していた。
気がつくと、
さっき、女がしゃがみ込んでいた辺りにも
水が流れている。
女の脇のテーブルにいた男たち三人が出ていったようだ。
ようやく分かった。
カップの中味も、空箱を水浸しにしたのも、
床に流れているのも、女の尿だったのだ。

この店のトイレには、鍵が掛かっている。
男たちはこれに言い掛かりをつけていたようだった。
仲間の娼婦にその場で小便をさせ、
カップに取った分をカウンターまで持っていって
ぶちまけさせたのだった。
或いは娼婦ではないのだろうか?

店員たちは無表情で、床にモップをかけていた。
モスクワはつまり、こんな街になった。