エチオピアのダメ人間(その8)

私はアジスアベバに押送される途中である。ハヤロムの職務の原則では、私のパスポートは本来、私が間違いなくアジスアベバに着くまで、エティオピア当局の手に置かれなければならない。私が今自分のパスポートを受け取るということは、私は再び自由の身になって、ジャーナリストとしての私の信念に従って、エティオピア政府の方針に逆らって、実力でエティオピア・エリトリア国境紛争を取材するかもしれない。少なくとも昨日私が彼に噛み付いた話の通りなら、私はアジスアベバ行きのバスを途中下車して、ラリベラかどこかを経由して再び前線に向かわなければならないのだ。ハヤロムはそれを知った上で、私にパスポートを返したはずだ。私に対する同情から、彼は自分の職務を一部不適切に遂行することを選んだのだ。
満員のバスに押し込まれながら、私はハヤロムの顔つきを見極めようとした。しかし、彼の薄い髭を生やした黒い顔からは何も読み取れなかった。バスの中で私は揉みくちゃになって、ハヤロムと最後の握手を交わすことさえできなかった。
そのまま、私はバスを降りなかった。カメラを取り出しもしないまま、翌日の夕方、アジスアベバのなじみの安宿へおとなしく戻り、フライトの都合でナイロビに戻った日まで、老いさらばえたかのようにぼんやりとエティオピアコーヒーを飲んで過したのだった。