グロズヌィ空爆

迷彩パターンに窓をペンキで塗りつぶしたマイクロバスに
護衛の戦士たちと乗り込んでグロズヌィを移動中、
ジェットの轟音が近づいてきた。
ドライバーは道から外れた土の上に車を寄せて停める。
ヴェダットが皆を促し、車を降りた。
空爆下では車は狙われやすい。
降りるべきなのだ。
が、チェチェンプレスの面々はヴェダットに言われるまで、
車の中でやり過ごすつもりだったようだ。
あまり経験がないのかもしれない。
近くから激しい銃声が聞こえてきて、私たちは音に向かって駆け出した。
対空砲火が行われている。
ビルの前の開けたアスファルトの上で、
ピックアップトラックの荷台に積まれた対空機関砲が火を噴いていた。
トラックのすぐ側まで近づいてファインダーを覗くと、
頭に薬莢が降ってきた。
砲口の延長線上に目をやるが、敵機は視認できない。
砲手には見えているのだろう。
ちゃんと狙いながら撃っている。
突然、砲手は銃座を捨てて、トラックを飛び降りた。
ジェット音が“ゴオッ”と迫る音に変わった。
“来る!”と思った。
反射的に、トラックの後に掘られた塹壕に飛び込んだ。
着弾音はしかし、ビルの後ろから聞こえた。