変わる力

短い原稿を書き始めたところ、その原稿には書き込めない分量のさまざまな
「言い分」で頭がいっぱいになってきました。ぼくは先日、パレスチナ・ガザ
を訪れ、近くアフガニスタンパキスタンを訪れようと計画しています。
今に始まったことではなく、パレスチナ人はイスラエルを変えることは今後も
決してできません。この問題はいままさに血が流れているので、解決の必要が
ありますが、解決できるのはイスラエルと米国だけです。イスラエルと米国が
自らを変えるしかない。が、難しい。
アフガニスタンについては、アフガン人はこの戦争の状況をコントロールして
います。逆に米国もNATOアフガニスタンを変えることはできないでしょう。
しかし、それにしても、この戦争を終わらせるには、やはりアフガン人では
なく、米国が変わるほかありません。
問題は、米国に人がいないことです。ベトナム戦争のときは、戦争を
終わらせるために奔走した米国の冷静な知性たちがいました。しかし、今回は
スーザン・ソンタグも、ノーマン・メイラーも、もちろん、マイケル・ムーア
も、対テロ戦争そのものがお為ごかしであることを見抜く力がなかった。
唯一の例外はノーム・チョムスキーだけでしょうか。しかし、彼は米国で
まるで知名度がない。オバマは「チェンジ」といっていますが、彼が
「チェンジ」によって行う方向転換はパレスチナアフガニスタンから観ると
誤差にすらなりません。
これがロシアなら、暗殺されても、投獄されても、人間の側に立ち続ける
わずかな知性たちが、一人、また一人と立ち上がり、決して絶滅することは
ありません。そして、米国と違って、ロシアは一定期間の混沌の末に、
民衆の爆発が起こり、本当にその社会が180度変わってしまいます。
しかし、米国の文明はロシアや欧州ほど成熟できていない。
黒人奴隷の強制連行と強制労働によって国家を建設した米国が、黒人を
自分たちの指導者として擁立するまでに200年以上かかりました。
アメリカ・インディアンを侵略し、その平和な社会を破壊し尽くしたとき
から、戦争によって国家を維持し続けてきた米国が、戦争依存を断ち切る
のに、あとどれくらいかかるのでしょう?