ハマスとファタハ

よく考えてみると、ぼくが会ったトンネル貿易商はみんなハマスではなく、
ファタハのメンバーとその支持者でした。ハマスに拘束されたりした経験が
あり、みなハマスを憎んでいました。つまり、「ハマスの武器密輸ルート」に
なっているわけがないです。
ところで今回はガザ全域で、ヤセル・アラファトの大きなポスターや看板を
いっぱい見掛けました。2000年に来たときはそんなの一度も見なかったのに
です。2000年は本当にハマスイスラム聖戦一色だったなあ。
アラファトは普通に病院のベッドの上で死にましたが、ハマスの指導者
アハマド・ヤシン師の方は劇的にイスラエルの暗殺作戦で殉教したという
のに、ヤシンのポスターは一度見掛けただけで、それすらアラファト
ポスターと並んでいました。今はハマスでさえアラファトを讃えているのだ
そうです。それは、現在のファタハの指導者の腐敗を糾弾する材料とされ、
ファタハアラファトを見習うべきだ」という主張に使われているとか。
さて、ぼくが出会ったファタハのメンバーは自宅にもアラファト肖像画
掲げていましたが、彼にマハムード・アッバスパレスチナ大統領について
の考えを聞いたところ、とにかくおそろしい言葉を使って罵っていました。
政治汚職で真っ黒で、その汚職をネタに部下にゆすられるような立場なので、
指導力ゼロなんだそうです。
アラファト時代からファタハは腐敗してたでしょ?」と、重ねて訊くと、
アラファトは自分の部下の汚職を誰よりも知っていて、部下が自分に
逆らいそうになったら、分厚いファイルを取り出して、その部下を脅迫
できる立場だった。だから、誰も彼に逆らえなかった。しかし、
アッバスは、自分が一番厚いファイルに収まっているんだ」との説明。
ファタハにすら全く信頼されていない大統領アッバスは、ほとんどの
パレスチナの住民から見捨てられて、イスラエルと米国しか味方がいない
感じです。