エジプト

ガザでエジプトの話をするのもなんですが、ガザの人たちのエジプトに対する
感情はひどく悪いです。イスラエルの攻撃の中、国境へ逃げてきた一般市民を
エジプト当局は救助するどころか、銃を向けて追い払ったのです。
そもそも、ここ何年も続いているイスラエルのガザ封鎖はエジプトの全面的な
協力があって初めて成立しました。つまり、ラファの国境をエジプトが完全閉鎖
したので、ガザ市民は飢えと欠乏に苦しんだのです。
エジプトに越境できたパレスチナ人は救急車に乗った重傷者か、秘密トンネルを
くぐり抜けた密入国者だけでしたが、イスラエル人の方はその頃、タバの
国境から歓迎されつつエジプトに入国し、ダハブだのシャルムシェイクだの
といったリゾート地で観光を楽しんでいたのです。
もちろん、そんな矛盾はエジプト国民にも分かっており、新聞には
「軍隊はどこだ?」「青年たちはガザへ国軍を送れと要求」などといった
見出しが躍っていました。
カイロのバスターミナルでは、二階建てのターミナルビルの屋上に、長い
銃身のライフルを持った警察官が二人、下をうかがっているのを見掛け
ました。
ラファに近いアリーシュの金曜デモでは、数十人のデモ隊を数百人の盾と
棍棒、銃で武装した警官隊ががっちり取り囲んでいました。
つまり、エジプト当局はどこか外国の軍隊だとか、パレスチナ人だとかでは
なく、自国民を恐れ、暴動を警戒しているのです。
ハマスの出身母体「ムスリム同胞団」はエジプトで非合法ですが、もし、
民主的で自由な選挙があったら、間違いなく与党となるであろうと
いわれています。ハマス支配のガザがエジプトの同胞団を刺激し、
エジプトの貧困と停滞の元凶といわれる、腐敗したムバラク独裁政権
打倒することを、彼らは恐れているのです。
そんなしょうもないエジプトに、明日はガザから戻ろうと思います。