サムソン

太ったおじさんが二人、小指を絡ませながら歩いていた。アラブ世界だとこれは普通のことだけど、ここではどうなんだろう?性が簡単な社会だから、もーほーもおおっぴらなのか、それとも、アラブと同じで、ただの仲良しおじさん二人組なのか?
アバカリキの警察官のサムソンからSMSが来た。「Ur Heart is Gold(きみの心は黄金)」…これはいったい、どういうことだろう?ひょひょひょひょっとして、ぼくはサムソンに迫られているのか?それとも、ナイジェリアではこれは、日常的な自然な会話なのか??
SMS着信直後に、そのサムソンから電話がかかってきた。「今からそっちいっていい?」そして、昼飯中にやってきたのだ。非番だそうで、私服だ。
玄関口での、「やあ、どうしてる?元気?」とか、差し障りのない会話のあとで、「家に入っていい?」ときた。
この国の警察官はとんでもなく腐敗している。ぼくとしては、サムソンが警察官の職務として、怪しい外国人の動向を探りに来たのか、あるいはこの国の警察官の本職として、賄賂を取るネタを見つけに来たのか、それともおほもだちを作りたくて迫ってきたのか、あるいは、本当に気さくなナイジェリア人としてのフレンドリーな人付き合いなのか、図りかねていた。
「じじじじじつは…」と、ぼくは切り出した。「まだ、来たばかりで、コーヒー一杯もてなせない状態なんだ。家具もなくて…」
サムソンは「いいよ。気にしなくて。また来るよ」といって帰って行った。そういえば、日本に以前、サムソンという雑誌があったなあ。