60億の敗北

米国の侵略戦争の失敗と、敗北が決定的になろうとしている。

3月20日長崎市の集会で私は、
「世界中で一千万人がデモをやっても、戦争は止められなかった。
ましてや今ここに1500人が集結したからといって何も変わらない」
といった。
あとから何人もの参加者・主催者から非常に強い反発・反論をいただいた。
しかし残念だが、私がいったのは事実だ。

私たちは一年前、戦争を止める大作戦に失敗した事実を
重く受け止めなければならない。
私たちの失敗のせいで、私たちの国は侵略に加担し、
イラクは現在このような状況なのだ。

状況を変えるには最低限、失敗例を繰り返さないことが必要で、
失敗例よりも効果がある別の行動を取らねばならない。
そこで私は、長崎の平和運動を支える市民に、
こんなところにいないでイラクへ行ってはどうかと提案した。
安全を確保する方法はあるけれど、状況が分からないまま現地へ行けば、
ケガをしないとも命を落とさないとも限らない。
が、私たちは私たちの失敗の結果として、このままでは侵略者だ。
懲罰されて殺害されても仕方のない立場なのだ。
「怖いからやりません」という人に平和を語る資格はない。

平和運動を単に、「戦争をしないこと」と考える人たちを私は支持しない。
積極的に侵略戦争を起こそうという勢力が存在するときに、
「なにかをしない」ということは、「なにもしない」ことにしかならない。
それは事実上、侵略を見て見ぬ振りすることだ。
戦争に向かうベクトルを上回る、反対方向のベクトルを作り出さなければ、
動きをくい止められるわけがない。
それを非暴力でやろうというならなおさら、
武器を持って開戦勢力を押し止めようとするよりも、
大きな犠牲を覚悟しなければならない。

しかし、実際には平和運動をしようとする人たちの行動に、
行動の効果というものは計算されておらず、
自己満足以上のものはなかったのだ。
自らにリスクを背負い込んだのは、ほとんど唯一、
「人間の盾」数十人だけだった。
それさえ、世界60億の「なにもしない勢力」を前に多勢に無勢で、
なすすべもなく、戦争は始められた。
私たちは私もあなたも、全員が敗北者だった。