遠い場所

百回ダイヤルして一回繋がるかどうかというインターネットの接続状況だ。
なんとか、一日に二回ほどメールチェックに成功している。

イラク派兵を推進した自民党は選挙に勝った。
派兵阻止を公約した民主党は政権を取れなかった。
だから、侵略参加は民主主義の手続きを踏み、
国民の意思として決定されたことだ。
私たちは自分たちの決定の代償を支払わねばならない。
私たち自身が、私たちの失敗を思い知るまで、
それは痛ましい代償になるだろう。

日本軍はイラクの復興に貢献するだろう。
しかし、誰からも感謝されず、世界市民の眼前に恥を晒し、
屍を晒すだろう。
イラク人にとっては、日本軍は現地の同意を得ぬままに来た方がいい。
イラク人にとって今必要なのは強力で不正な敵だ。
敵がいなくなってしまったら、イラク人は互いの間に
敵を見つけ出して殺し合いを始めるだろう。
米軍や日本軍がいる限り、復興は何度挫折しようと進められ、
殺すのが簡単な都合のいい敵もい続けてくれる。
イラク人は侵略者と敢然と立ち向かった国民として、
歴史に誇ることもできる。
一方日本は、世界の目にいよいよ、事実上主権もモラルも放棄し、
自国民の命さえ無意味に差し出す米国の属国として、
確固たる認知を受けてしまうだろう。
この派兵はイラクの将来には大いに有効だが、
日本の将来にはマイナスしかない。

そもそも、イラク人は世界に恥ずべき経歴を作り続けていた。
サダム・フセインに苦しめられながら、
自力では何一つ抵抗らしい抵抗ができないばかりか、
多くが迎合し、その権力維持に協力し続けた。
イラク国内の問題だけならいざ知らず、
イスラム世界では稀有なケースとして、
サダムのイラクはイランを侵略し、クウェートを侵略し、
国内の少数民族、宗教的異派を大量に殺戮した。
本当は、イラク人自身にサダムを倒す責任があったのだが、
彼らは遂にそれを果たさなかった。
米国がそれを肩代わりしてサダムを倒したことは、
イラク人の多くにとって棚ボタとでもいうべき幸運だった。
おまけに、米国は頼まれもしないのにそれをやったのだ。
イラク人にとって、頼んでもいない軍事行動を感謝するいわれはない。
だから彼らには、「さあ、用がすんだら出て行ってくれ」
という権利がある。
出てゆかなければ懲罰する権利もある。
米軍はまさに今、痛ましい懲罰を受けている最中だ。