モリンホールの調べ

知的障害者精神障害者の権利回復に生涯を捧げ、
兄が入所している施設「コロニー雲仙」の運営にも貢献した
長谷川泰三弁護士が他界し、
浅草橋のカソリック教会で葬儀があった。
兄が参列するというので会いに行った。
会場で、親しみ深い弦の調べが聞こえてきた。
モンゴルの民族楽器モリンホール(馬頭琴)だ。
音を聞いただけで、私には分かった。
演奏しているのはチンゲルトンさんだ。
モリンホールの大演奏家チンゲルトンさんは、
巣鴨の蒙古料理店シリンゴルのシェフだ。
私は彼の演奏を聴きたくて、
安いとはいえないシリンゴルにことあるごとに通っている。
故長谷川弁護士はやはりこの調べを愛し、シリンゴルに通っていたのだそうだ。
この音色で送られる人生は、
それまでがどうだったとしても悪くないような気がする。
故人が急に親しみ深く感じられた。
兄はまた少し老けていた。