丸見え公安くん

金曜日の代々木上原東京ジャーミィ―――
イラク大使が礼拝に訪れていた。
一緒に来ていた日本人イスラム聖戦士ハワジにいわれて気づいたのだが、
灰色のスーツを着た日本人が二人、
カメラを首から提げてモスク敷地内をうろついている。
モスレムらしい服装の礼拝者たちの中で、滑稽なほど完全に浮いている。
友人の一人が教えてくれた。
公安警察官だ。
9.11以来、公安は東京ジャーミィに通っては、初めパキスタン人礼拝者を、
続いてインドネシア人、マレーシア人礼拝者を強く監視しているという。
彼らは集団礼拝中に礼拝所内まで入ってきてじっと見ているそうだ。
もちろん、礼拝中は神聖な時間であり、礼拝所内は神聖な場所だ。
東京ジャーミィでは礼拝者以外の立ち入りについて、
見学は認めているが、監視活動を認めているとは聞いていない。
礼拝所の外でも出入りはチェックできるはずなのだ。
モスレムたちは不満を募らせている。
あるパキスタン人の友人はいった。
「私たちの国の人権感覚は低いという。
だが、パキスタン警察でさえ、国内の少数派ヒンドゥー教徒監視のために、
逮捕状や捜査令状もなく、ヒンドゥー教寺院の中まで入ってきたりはしない。
それは冒涜行為にあたり、ヒンドゥー教徒の心を傷つけると分かっているからだ。
日本の公安警察にはモスレムに対して、
信仰心を尊重しようという誠意のかけらも見えない」